Vol. 14

台風・大雨に備える② ハザードマップ確認のポイントと活用の方法

台風・大雨に備える

台風・大雨に備える② ハザードマップ確認のポイントと活用の方法

01. ハザードマップは「避難の方針」を定めるために使う

(前回) 風水害対策①ハザードマップによるマンション周辺のリスク確認

前回のコラムで紹介をした「地域のハザードマップ」(自治体)または「重ねるハザードマップ」(国土交通省)を見ると、自宅のマンションおよびその周辺に色がついていたかどうかで一喜一憂しがちです。 しかし、ただ喜んだり落ち込んだりしてばかりもいられません。

具体的には地図を見た後にどうすればよいのでしょうか。
ハザードマップの役割は「避難の方針」を定めることにあります。

災害が迫っている際に避難する必要があるのかどうか、逃げるとしてどのように避難するのか、こうした方針と具体的な行動内容をハザードマップから読み取ることができるのです。

ハザードマップは「危険を知る」地図

ちなみに、ハザードマップは「安全な場所」ではなく、「危険な場所」を把握する地図として活用することが重要です。
色がついていれば間違いなく危険ですが、色が無かったとしても安全と言えない場合があり、自然災害の場合は予測ができないことが発生します。

ハザードマップの整備は毎年少しずつ行われているため、自宅のマンション周辺に色が無かった場合、「①事実、安全なため色がない」「②まだハザードマップが作られていないため色がない」の両ケースがあり得ます。

最終的には自分の目で危険を探すことも重要です。

02. 命に危険が生じるかどうかを確認する

それでは実際に、自宅のマンション、学校・職場周辺のハザードマップを見てみましょう。
「地域のハザードマップ」(自治体)または「重ねるハザードマップ」(国土交通省)どちらを見る場合も、注意すべきポイントは同じです。

1.建物周辺のリスク(色)を確認

まずは建物周辺に「色」がついているかどうかを確認します。色がついていない場合、沈んだり崩れたりする要素が確認できなければ避難は不要であり、これは防災的にはたいへん良い状況であると言えます。

津波・浸水・土砂災害など全てのハザードマップをチェックしても色がついていない場合、さらに目視でマンション周辺を見ても、崩れそうな崖や山、ハザードマップにまだ掲載されていなさそうな小規模河川や用水路が全くなければ、ひとまずは安全な場所と言えます。

大地震の揺れ、台風による暴風、大雪による降雪は、場所を選ばずに影響が生じますが、津波・浸水・土砂災害などは生じる場所が決まっていますので、地域によってはほとんどの災害リスクを無視できる場所も確かに存在します。この場合は「在宅避難」の準備をします。

2.自宅に留まった場合の影響を確認

では、建物周辺に「色」がついていた場合はどうでしょうか。この場合は、災害による影響が生じた際に、自分の部屋にいると生命に危険が生じるかどうかをイメージしてください。

例えば、洪水ハザードマップで「最大3メートル」の浸水が生じる地域にマンションがある場合、マンションの1階は水没、2階は床上浸水の恐れがありますので、自宅で不意打ちを食らうと命にかかわる恐れがあります。
この場合は安全な「室外へ避難」を行います。

一方、最大3メートルの浸水が生じる地域にあるマンションでも、自宅が3階以上にあれば不意打ちを食らっても命に危険が生じる可能性は低いため、自宅に留まることができます。
ただし建物が停電・断水する恐れがあるため、備蓄品などの準備が必要です。

03. ハザードマップ別に見る危険の判断ポイント

それではここから、国土交通省の 「重ねるハザードマップ」を使用して、地図の確認ポイントを解説します。

津波ハザードマップ

図:国土交通省・重ねるハザードマップ(津波・大阪駅周辺)
図:国土交通省・重ねるハザードマップ(津波・大阪駅周辺)

マンションは津波に強い建物です。
自宅の部屋が津波で水没する深さになければ、そのまま建物に留まる「在宅避難」を行えます。
自宅の部屋が水没する深さにある場合は、大地震の揺れが収まりしだい、安全な「室外へ避難」を行う必要があります。

高潮ハザードマップ

図:国土交通省・重ねるハザードマップ(高潮・名古屋駅周辺)
図:国土交通省・重ねるハザードマップ(高潮・名古屋駅周辺)

台風による影響で高潮が生じた場合は、海側からの氾濫が想定されます。
自宅の部屋が水没する深さにある場合、避難が遅れると命にかかわるため「室外へ避難」が必要です。

洪水ハザードマップ

図:国土交通省・重ねるハザードマップ(洪水・東京駅周辺)
図:国土交通省・重ねるハザードマップ(洪水・東京駅周辺)

大雨や台風により河川が氾濫し洪水が生じた場合は、周辺での浸水が想定されます。
津波・高潮と同じく、自宅の部屋が水没する深さと想定される場合は、避難が遅れると命にかかわるため「室外へ避難」が必要です。

洪水ハザードマップ(家屋倒壊等氾濫想定区域)

図:国土交通省・重ねるハザードマップ(洪水/家屋倒壊等氾濫想定区域・広島駅周辺)
図:国土交通省・重ねるハザードマップ(洪水/家屋倒壊等氾濫想定区域・広島駅周辺)

洪水ハザードマップには「家屋倒壊等氾濫想定区域」というオプション表示があります。
(※執筆時点では、画面左の情報欄にある「全ての情報から選択」→「災害リスク情報」→「洪水浸水想定区域」を選択すると、ボタンが表示されます。)

画像にある「○」で塗りつぶされている地域は「氾濫流」を示し、洪水による水の勢いで木造家屋が倒壊する恐れのあるエリアです。
一方、河川沿いに赤く塗りつぶされている地域は「河岸浸食」を示し、洪水で地面が削られ建物ごと崩落する恐れのあるエリアを示します。

マンションの場合、「氾濫流」には耐えられますが、「河岸浸食」では建物が破壊される恐れがあります。河岸浸食の範囲に建物があり、かつ特別な対策などが取られていなければ、部屋が浸水しない場合でも「室外へ避難」が必要になる場合があります。

土砂災害ハザードマップ

図:国土交通省・重ねるハザードマップ(土砂災害・横浜駅周辺)
図:国土交通省・重ねるハザードマップ(土砂災害・横浜駅周辺)

土砂災害ハザードマップは、大地震や大雨により生じる「がけ崩れ・地すべり・土石流」で被害の想定される地域を示します。

黄色の範囲は「土砂災害警戒区域(イエローゾーン)」で、土砂災害により生命に危険が生じるエリアです。
赤色の範囲は「土砂災害特別警戒区域(レッドゾーン)」で、土砂災害により生命および建築物にも危険が生じるエリアを示します。
木造の場合はいずれのエリアにおいても避難が必要です。

マンションの場合は、低層階など土砂災害の影響を直接受ける恐れがある部屋は、避難をした方がよいですが、上層階は在宅避難ができる可能性があります。

04. 終わりに

最近毎年のように「想定外」の水害が発生し、多くの犠牲者が生じています。
しかしこれらの水害の多くは、ハザードマップにより危険が示された場所で起きています。
避難さえすれば被害を無くすことができる水害、ぜひ我が家の被害ゼロを目指して地図をご確認ください。


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