(1)大地震で生じる被害・地震防災のポイント
大地震に備える
目次
大地震の揺れはどこでも「震度7」を想定した対策が必要
水害や土砂災害など生じる場所が決まっている災害と異なり、大地震の揺れは日本中どこにでも発生します。世界有数の地震国日本においては、北海道から沖縄まで、どの地域においても最大クラスとなる「震度7」を想定した対策が必要です。
日本全国で見れば毎年にように大地震が生じていますが、自分の住んでいる地域で考えると、そう頻発する物ではありません。そのため、「この地域では生まれてこの方大きな地震が生じたことはないから今後も安全」とか、「ここ100年間大きな地震が起きていない地域だからここで地震は起きない」と考える方もいます。
しかし、大地震は数千年~数万年といった時間軸で生じる自然現象です。わずか100年程度地震が発生していないというのは、安全の証明にはなりません。大地震はいつでもどこにでも生じる、常に備える・事前対策をするという意識と行動が重要です。
「大地震」が引き起こす「自然現象」と「自然災害」について
大地震という自然現象は「ただ揺れる」だけの現象であり、これで人が命を落とすことはありません。揺れにより建物が倒壊したり家具や家電が転倒したりすることで、人の命を奪う「自然災害」に変わります。この意味では、大地震の揺れによる被害は「人災」という考え方もできるのです。
地震による強い揺れは、津波・土砂災害・火山の噴火など他の自然現象を誘発させたり、ため池氾濫・土地の液状化・火災旋風を伴う地震火災などの自然災害をもたらしたりすることもあります。また都市部で大地震が生じれば、インフラに大きな被害をもたらします。
大地震の揺れそのものを「避ける」ことはできませんが、揺れがもたらすその他の自然現象や自然災害は、安全対策を講じたり避難をしたりすることで、被害を免れることもできます。地震が引き起こす現象を理解しておくことが、地震対策の前提として重要です。
強い揺れ | 建物の倒壊や、家具・家電の転倒・衝突などの被害をもたらす |
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津波 | 地震が海底の下の浅い場所で生じると、大きな津波が発生する |
火山の噴火 | 大地震が火山の噴火を誘発させることがある |
土砂災害 | 地震の揺れが、がけ崩れや地すべりを生じさせる |
ため池氾濫 | 農業用などのため池が破壊されて、浸水や土石流が生じる |
液状化現象 | 埋め立て地などの地盤が液体状になり、建物やインフラに被害を与える |
地震火災 | 炎の竜巻・火災旋風を伴う、大規模な延焼火災が生じることがある |
津波火災 | 津波の浸水域で、大規模な火災が生じることがある |
インフラ被害 | 電気・水道・道路などのインフラを物理的に破壊する恐れがある |
「地震マップ」による揺れの大きさの想定について
地震の揺れに関する影響を想定した資料に、「地震マップ」や「揺れやすさマップ」などの資料があります。「○○市 地震マップ」「○○町 地震揺れやすさマップ」などのキーワードを使い、スマートフォンやパソコンで検索することで閲覧できます。
地震の揺れの大きさを可視化した、ハザードマップの一種ですが、このような資料を閲覧する際には注意が必要です。地震マップなどに示されている地図上の揺れの大きさは、「想定の場所で、想定する大きさの地震」が生じた場合の予測であるという点です。
発生する場所が決まっている洪水や土砂災害と異なり、地震の揺れはどこで生じるか分かりません。地震マップでは震度5強の想定である地域も、足下で直下型の地震が発生すれば「震度7」の揺れに見舞われる可能性があります。家庭の防災においては、常に「震度7」の揺れに備えることが重要なのです。
大地震の起こる「確率」に関わりなく、地震対策を始める
今後30年以内に70%の確率で生じると想定される首都直下地震、今後40年以内に90%の確率で生じると想定される南海トラフ地震。など、特に大きな被害をもたらすことが想定されている地震については、政府により「確率」の数字が示されています。
この確率、実は日本全国の値を見ることが可能です。文部科学省の所管組織「防災科研(NIED)」が運営する「地震ハザードステーション」というWEBサイトには、地震に関する様々な情報が公開されています。この中にある「地震ハザードカルテ」という機能を使うことで、「自宅の大地震の確率」を調べることができます。
地震ハザードカルテ
https://www.j-shis.bosai.go.jp/labs/karte/
地震ハザードカルテは登録不要・無料で使用できます。WEBサイトにアクセスし、自宅や職場など任意の場所の住所を入力することで、自宅周辺の地震リスクをまとめたレポートを出力することができます。これを見ることで、例えば「今後30年以内に生じる自宅周辺の大地震の確率」などを確認することができます。
J-SHIS map
https://www.j-shis.bosai.go.jp/map/
さらに「地震が起きる確率」を日本全体の地図に表示させて見ることもできます。この地図は、地震ハザードステーションで提供されている「J-SHIS map」で閲覧できるもので、30年以内に震度6弱以上の揺れに見舞われる確率を、5段階の色で表しています。地盤の緩い平野部や、海溝型の地震が生じる地域では、揺れの確率が高くなっています。
一方、この「将来的に大地震が生じる確率」は、参考程度にとどめてください。行政などが地震対策を行う際には、地震の「確率」を出すことで、防災の予算を優先的に振り分ける地域を定める必要がありますので、こうした数字を算出することが重要な意味を持ちます。
しかし大地震は、確率の高い・低いにかかわらず、日本中いつでもどこにでも生じています。自宅周辺の「地震の確率」が低かったとしても、家庭においては明日大地震が生じる、と考えた対策が重要です。意識を高めるためにこうした資料をチェックすることは重要ですが、数値の内容に関わりなく、地震対策は「今日から」始めてください。
終わりに
大地震は予知をすることができないため、事前対策の有無が、そのまま生存率に直結します。しかし、頑丈な建物に住み、室内の安全対策をきちんと講じれば、被害を大きく軽減できる災害でもあります。次回以降のコラムでは、具体的な地震対策のポイントについて解説をいたします。
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