Vol. 04

(2)室内の安全対策・家具や家電の固定

大地震に備える

室内の安全対策・家具や家電の固定

大地震に対する室内の安全対策

大地震の揺れに対する重要な準備が、家具や家電の固定です。マンションそのものが無事であっても、室内で家具や家電の転倒・移動・落下などが生じると、負傷したり最悪の場合は命を落としたりする恐れがあります。また、人への被害が生じなくても、ドアが開かなくなったり、通路や廊下が塞がれたりすると、二次災害からの避難が遅れて、間接的に命へ危険をもたらします。

さらに、室内がメチャクチャな状況になると、自宅で被災生活を送る「在宅避難」が難しくなり、建物が無事でも避難所などへ移動する必要が生じます。命を守った後の生活を維持するためにも、室内の安全対策を徹底することが重要です。

家具の固定は最後の手段

室内の安全対策と言えば、「突っ張り棒」などの器具を利用した家具固定がイメージされます。もちろんこれは有効な方法ですが、そもそもで考えれば、まず転倒するような家具・家電を室内に置かないことが最良です。作り付けのクローゼットや収納があれば、まずこれらを活用しましょう。

とはいえ、家具はもちろん家電などを全く設置しないことは難しいと思います。次に考えるべきは、転倒・移動・衝突・落下などが生じても、人に直撃をしたり、避難経路をふさいだりするような場所に物を置かないことです。特に布団や窓ガラスに直撃をする場所は避けるようにしてください。

しかし、全ての家具や家電を理想的に配置することは難しい場合があります。そこであわせて行いたい対策が、「固定」となります。

「金属の器具」を使用したネジ固定

家具や家電を固定する際に、最も効果的な方法が「金具」と「ネジ」を使用した固定です。マンションの壁(の中にある下地の木材)と家具・家電を直接固定する方法となります。正しく設置することができれば、大地震の直撃を受けても、家具や家電が転倒したり移動したりするリスクをかなり小さくでき、しかもメンテナンスもほとんど不要となります。

金属の耐震固定器具は、よく使われる「L字金具」をはじめ、直線金具や、金属プレートとベルトやワイヤーを使用した固定器具、テレビとテレビ台をつなぐ金属ポールなど種類豊富です。用途に合わせて選択をすることができます。

なお、マンションによっては使用細則などでネジ打ちが不可となっている場合もありますので、金属の器具を使用したい場合は、自分の住んでいる建物においてネジ打ちができるかどうか、使用細則を確認するようにしてください。

金具による家具固定の例

左上・L字金具による固定。右上・プレートとベルトを使った冷蔵庫の固定。下段・直線金具を用いた家具の固定。家具・家電の形状や壁の位置にあわせてセレクトができます。

注意点としては、ネジを打ち込む際には木材の「下地」部分を探して、固定する必要があるということです。マンションの一般的な壁には、画びょうなどを打てる石膏ボードと呼ばれる板が使われていますが、石膏ボードはネジなどを打ち込むと崩れてしまいます。

そのため、石膏ボードを支えている木材の下地を見つけ、そこにネジを打ち込む必要があるのですが、石膏ボードがマンションの躯体壁(コンクリート)に直接圧着されている場合などは、下地の木材がありませんのでネジ止めはできません。この場合は粘着タイプの固定器具や、突っ張り器具を使用して下さい。

一方、壁の裏側に木材の下地などがある場合は、ネジ止めを行える可能性があります。下地は、部屋の設計図を見たり、「下地センサー」などの器具を使ったりすることで探し出せますので、ぜひ正しく固定してください。

下地センサーを使用して、壁の裏側にある木材の「下地」を探しているところ。石膏ボードには直接ネジを打てないため、下地を探すことが重要です。

「粘着」による固定器具で家具・家電の転倒を防止する

部屋が賃貸で、ネジを打ち込むことができない場合。あるいは、固定したい家具や家電の後ろに、ちょうど良い壁がなかったり、下地が入っておらずにネジを打てなかったり、家具や家電側にネジやベルトを固定する部分がなかったりする場合もあります。金属パーツによる固定が難しい場合は、「粘着」タイプの器具を使用するのがおすすめです。

「L字」粘着固定器具

ネジの代わりに、粘着シートで家具・家電と壁を直接固定できる、L字タイプの「粘着」固定器具もあります。大型のタンスや食器棚など、重量のある家具固定に向いています。

「プレート&ベルト」粘着固定器具

ネジの代わりに、粘着シートでプレートを壁や家具・家電に固定できる、ベルトを使った「粘着」固定器具です。壁に密着させられない家電などの固定に向いています。

粘着ジェルマット

100円ショップなどでも売られている、下側を固定する粘着ジェルマットです。小物やインテリア、テレビやPCモニタ、パソコンなどの小型家電の固定に向いています。

粘着タイプの「L字」固定器具、壁紙などへ貼り付けることができます。

「突っ張り棒」を使用して背の高い家具の転倒を防止する

もうひとつの耐震固定器具に、「突っ張り棒」があります。突っ張り棒は、建物の天井と家具や家電の間に設置し、「突っ張る」ことで転倒や移動を防ぐ器具です。金具や粘着タイプの器具を設置する際には、家具などを移動させる必要がありますが、突っ張り器具は家具を移動させずに後付けでき、また工具なども不要で設置が簡単です。

半面、設置する場所や方法を誤ると効果を得ることができないため、正しい設置が不可欠です。特に重要なのが、天井の強度の確認です。例えばマンションの室内で、天井ボードがコンクリートの構造体に直接点けられている箇所は、突っ張り棒で力を加えても問題ありません。一方、構造体と天井ボードの間に空間のある「吊り天井」については、金属金具の使用と同じく天井ボードの裏側にある「下地」を見つける必要があります。

多くのマンションでは二重天井の構造になっており、下地以外に突っ張り棒で力を加えると、天井ボードが抜けたり歪んだりする恐れがあります。部屋の図面などを確認した上で、下地センサーなどを使用して下地を見つけるか、あるいは構造体以外の場所には突っ張り器具を使わないという判断も必要になります。

突っ張り器具が使用できる場合は、必ず「2本セット」で「壁側」に設置してください。また、突っ張り棒は次第に緩むため、定期的な「緩みチェック」が必要です。半年に1度は確認、また地震に見舞われた後にも点検をしましょう。

突っ張り棒の正しい取りつけ位置、壁側に2本セットで固定してください。
その他の突っ張り固定器具。メタルラック一体型の固定器具(左)、コンクリの梁などに強固に固定できるパンタグラフ型の固定器具(右)

「ベルト・ストッパー・耐震ラッチ」で荷物や食器の落下を防止する

食器棚や収納棚を固定しても、中の荷物が落下すれば大きな被害をもたらします。特に、赤ちゃんのベッド、介護をしている家族の布団、ペットの寝床など、その場から身動きの取れない家族に直撃するような場所には、落下する荷物を絶対に置かないようにするか、固定が必須です。

ベルト・ワイヤー・テープ

棚に入っている荷物はベルトやワイヤーを棚の横方向に通して落下防止を。書籍は、図書館などでも使われる落下抑制テープを棚板に貼ると、出し入れを邪魔せず対策できます。

粘着マット・粘着ブロック

小物やインテリアは、見た目を悪くすると固定そのものをやめたくなりますので、下側を固定する粘着マットや、横側を固定する粘着ブロックを使うと、綺麗に仕上がります。

ストッパー・耐震ラッチ

食器棚やキッチンの吊り戸棚の「開き扉」には、ストッパーを設置しますが、揺れたときにだけ自動で扉を固定する「耐震ラッチ」を使うと、生活を邪魔せずに固定ができます。

食器棚の開きトビラに取りつけた耐震ラッチ、揺れを感知した時だけ扉を自動的にロックしてくれます。

終わりに

戸建て住宅と比較して地震の揺れに強いマンションは、室内の安全対策を徹底できれば命を守りやすい空間を作れます。また、タワーマンションの高層階などは、地震の揺れが特に大きくなりますので、徹底した家具固定などが必要です。これらの対策は揺れてからでは間に合いません、ぜひ事前に対策を講じてください。


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