Vol. 9

防災リュック・非常持ち出し袋を作る(前編・考え方編)

避難リュック作成

防災リュックの考え方とは?
防災リュックの考え方とは?

防災といえば防災リュックを作ること!と考える方は結構多いのではないでしょうか。
防災リュックは重要ですが、家庭の防災全体における優先順位を考慮したり、中に入れるモノの選び方や運用などについても考えることが重要です。
今回は「防災リュック」の考え方についてお話しします。

01. 命を守るための防災リュック

家庭の防災では「命を守る準備」と「生活を守る準備」が重要です。防災リュックはこれらの事前準備として作成します。

まず、「命を守る準備」として必要なポイントについて考えてみましょう。
命を守る防災リュック作成は、自宅から避難場所へ移動をする可能性が高い時に重要となります。例えば大地震による津波・火災・土砂災害から避難をする場合は、文字通り一分一秒を争う状況が想定されます。

また台風や大雨による浸水害などは、事前に避難の猶予が与えられますが、避難をためらうと余裕はあったはずなのに、家を飛び出す状況では一分一秒を争う状況が生じてしまいます。
この時、「ライトと、水と、そうだ、この間もらった缶詰が確か…」など、ゆっくり荷物をまとめる余裕はありません。

すぐに自宅から避難を開始するための準備として「事前に荷物をまとめる=防災リュックを作る」ことが重要になります。

02. 生活をするための防災リュック

学校や公共施設などの避難所には、最低限の備蓄として「水・食料・毛布」などが用意されています。
しかし量は多くとも1食分程度だったり、毛布も「毛布」ではなく「アルミシート」で代替していたりと、十分でない可能性があります。

また、災害の規模が大きくなり被災者が多くなると、量が不足して行き渡らなくなる恐れもあります。
さらに停電すれば夏の暑さ・冬の寒さも問題となりますし、断水すればトイレを使用することもできません。もちろん風呂やシャワーなども存在しないのです。
災害が発生しても、避難所へ行けば何とかしてもらえる…と考えたくなりますが、避難所は宿泊施設ではありません。

基本的には「屋根と床」以外は持参する、という意識で準備をすることが重要です。
そのため、避難用の防災リュックには、停電や断水が生じている避難先で、数日間滞在するためのものを入れておく必要があります。

03. 「小さな避難リュック」と
「大きな生活用バッグ」

防災リュックを作り始めると、多くの場合大きくなりすぎてしまいます。
例えば水と食料だけでも、3日分をきちんと準備すると1名分で10キロ、4名分で40キロを超えてきます。その他必要なものを詰め込めば、あっという間に重量が数十キロとなり、これを背負って逃げるのは難しくなります。中身の優先順位と詰め方が重要になるのです。

非常持ち出しセットを準備する際、大きなリュックやバッグを使用すると、あれこれと詰め込みたくなります。しかし目的は「素早く避難」をすることで命を守ることにあります。「重すぎて持てなかった」「荷物がかさばり避難が遅れた」では意味がないどころか逆効果なのです。
そこでおすすめの方法は、防災リュックを2つに分けることです。

ひとつは緊急避難用品を中心に小さくまとめた、走れる重さの「小さな避難リュック」の作成。
もうひとつは、避難生活用品を中心に必要なものを全て入れた「大きな生活用バッグ」の作成です。

津波や目の前に迫る浸水など、走って逃げないと命が危ないという状況においては、小さな避難リュックのみを背負って素早く避難。
台風接近時の事前避難や、大地震後に避難所へゆっくり移動する場合には、小さな避難リュックと大きな生活用バッグの両方を持って避難します。

小さな避難リュックの例
小さな避難リュックの例
大きな生活用バッグの例
大きな生活用バッグの例

04. 防災散歩で避難をイメージする

非常持ち出しセットを準備したら、避難先まで実際に背負って歩いてみてください。
荷物が重すぎないか、ルート上に危険な箇所はないかなどチェックすることができます。 数年に1回程度で構いませんので「昼間」「夜中」「雨の日」など、条件を変えて「防災散歩」をしてみると、足りない道具や気づかなかった危険箇所を見つけることができます。

「小さな避難リュック」が重すぎる場合は、楽に背負って走れる重さまで量を減らす必要があります。「大きな生活用バッグ」が重すぎる場合は、量を減らすか、あるいは自動車を使った事前避難をするかなど、避難のタイミングを変えることでも対応できます。

05. 終わりに

防災リュックはすぐに持ち出せなければ意味がありません。
特に「小さな避難リュック」は玄関や廊下など、必要な時にすぐ持ち出せる場所へ設置してください。
ただ、あまりに「THE・防災リュック」という外見にしてしまうと、インテリアを損ねてしまいたくなってしまいます。 オシャレなリュックを使う、カゴに入れるなど、見た目にも気を使うことが防災リュック作成の隠れたポイントとなります。


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